熱処理とは鋼に様々な性質を付与する目的で行う処理のことで、加熱と冷却の組み合わせにより
鉄鋼に希望する性質を与える事が可能です。焼ならし・焼なまし・焼入れ・焼戻し等の種類があり、
鋼の炭素量の違いや加工温度・時間を調整することで、様々な強度・粘り強さ等の性質を得ることができます。
ここでは、部品全体に施される一般熱処理の用語をご説明します。
調質(Q.T) Thermal Refining |
焼入れ後に、比較的高い温度(約400℃以上)に焼戻して、トルースタイト又はソルバ タイト組織にする操作。鋼の結晶粒子を細かくして材質を調整し、強い靱性を与える。 通常は焼き入れー焼き戻しの熱処理のことをいう。 |
焼ならし(N) Normalizing |
AC3点又はACcm点以上の適当な温度に加熱した後、通 常は空気中で冷却する操作。 その目的は、前加工の影響を除去し、結晶粒を微細化して、機械的性質を改善する事で ある。鉄鋼の焼ならし加工は、JIS B6911(鉄鋼の焼ならし及び焼なまし加工)に規定 している。変態点以上の適当な温度に加熱し、大気中で冷却する操作をいう。鉄鋼の前 加工の影響を除いて 機械的性質を向上させることを目的とする。 |
焼なまし(A) Annealing |
適当な温度に加熱し、その温度に保持した後、徐冷する操作。その目的は、残留応力の 除去・硬さの低下・被削性の向上・冷間加工の改善・結晶組織の調整・所用の機械的・ 物理的、またはその他の性質を得ることなどである。 鉄鋼の焼なまし加工は、JIS B 6911に規定している。鉄鋼を適当な温度に加熱した後 にゆっくり冷却する操作をいう。鉄鋼の内部応力の除去、結晶組織の調整等を目的と する。完全・低温・球状化・軟化・黒鉛化焼きなまし、その他目的により種類あり。 |
焼入れ(Q) Quenching |
オーステナイト化温度から急冷して硬化させる操作。必ずしも硬化を目的とせず、 単に急速に冷却する操作の事をいうこともある。なおオーステナイト状態でその後、 圧延ライン上で直ちに行う焼入れもこれに含み、これを圧延後直接焼入れということが ある。鋼を硬くし、または強さを増すために、変態点以上の適当な温度に過熱した後 水、油その他の冷却剤 を用いて急冷する操作をいう。 |
焼戻し(T) Tempering |
焼入れで生じた組織を、変態又は析出を進行させて安定な組織に近づけ、所用の性質 及び状態を与えるために、A1点以下の適当な温度に加熱、冷却する操作。焼きならしの 後に用いることもある。焼入れして硬くなると同時にもろくなった鋼に、靱性(粘り) を与える処理で、変態点以下の適当な温度 に加熱した後、冷却する操作をいう。 |
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