ねじの遅れ破壊は別名、静的疲労との呼ばれ、ねじの高強度化を検討するうえで注意しなければならない現象のひとつです。
⇒遅れ破壊とは
静的な引張り応力状態におかれた高強度部材が、ある時間後に突然脆性的に破壊してしまう現象のことです。
⇒遅れ破壊の原因
これらの高強度鋼の遅れ破壊は、製造工程や使用環境から鋼中に進入した水素が原因と考えられています。進入した水素はねじ部や腐食ピットなどの引張り応力が集中する部分の近くに集まって、鋼中に進入し遅れ破壊を引き起こすと考えられています。水素進入後のメカニズムについてはいくつかの説がありますが完全な解明には至っていないのが現状です。
(腐食ピットとは、錆が原因で表面にできる小さな穴のことを表します。)
⇒遅れ破壊の注意点
鋼中に吸蔵された水素は、通常その降伏強さや引張り強さにはほとんど影響を与えませんが、延性や靭性を劣化させる性質があります。したがって高強度化するほど材料の水素脆性化感受性が増大するため、高強度鋼では特に水素に対する注意が必要となります。