ネジの種類とは?ビス・ボルトとの一般的な違いや選定のポイントを解説
ネジ・ビス・ボルトは見た目が似ていますが、用途や構造により役割が異なります。六角ボルトやドリルねじなど多彩な種類があり、材質や強度、使用環境に応じた正しい選定が欠かせません。本記事では、それぞれの違いや特徴、選定のポイントに加え、実際の事例を交えてわかりやすく解説します。

ネジ・ビス・ボルトは、いずれも部品を締結するために欠かせない存在ですが、呼び方や構造、用途には違いがあります。ボルトは主にナットと組み合わせて強固に固定するのに対し、ビスは直接部材にねじ込んで簡易に使用できるのが特徴です。
ネジを適切に選ぶためには、部材の材質や厚み、求められる強度、使用環境を踏まえることが重要です。本記事では、それぞれの違いや種類、選定のポイントについて詳しく解説します。
「ネジ・ビス・ボルト」の一般的な違い

「ネジ」「ビス」「ボルト」という言葉は、法律やJIS規格で明確に定義されているわけではありませんが、製造業の現場では、その用途や形状に基づいて以下のように使い分けられるのが一般的です。
- ボルト: 主にナットと組にして使用される部品の総称
- ビス:比較的小さな直径のものが多く、頭部にドライバー用の十字穴やすりわり(マイナス溝)がある
- ネジ: ボルトやビスを含む、螺旋状の溝が切られた部品全体の総称として用いられる、最も広義な言葉
ネジの種類【製品の種類別】
ネジは大きく「ボルト」と「ビス」に分けられ、それぞれ構造や用途が異なります。どちらも部品を締結する役割を担いますが、形状や施工方法に違いがあるため、目的に応じた選定が重要です。ここでは代表的な種類を解説します。
・ボルト
ボルトは、外側にねじ山を持つ「雄ねじ」で、主にナットと組み合わせて使われます。スパナやレンチなどの工具で強いトルクをかけられるため、大きな締結力を発揮できるのが特徴です。以下では代表的なボルトの種類について具体的に紹介します。
・六角ボルト
六角ボルトは、頭部が正六角形をした最も基本的なボルトです。スパナやレンチを使って締め付けることができ、強いトルクをかけられるため確実な固定が可能です。JIS B 1180で規格が定められており、流通量も多く、入手のしやすさや価格の安さも大きな利点です。
建築現場では鉄骨の接合、自動車ではエンジン部品の固定など、強度が求められる多様な場面で用いられています。
・キャップスクリュー
キャップスクリューは、円筒形の頭部の中央に六角穴があるボルトで、六角レンチを差し込んで締め付けます。一般的な六角ボルトよりも頭部が小さく、省スペースでの使用に適しています。
さらに、部材にザグリ加工を施して埋め込むことで、表面をフラットに仕上げることが可能です。外観がすっきりするだけでなく、突起がないため安全性の面でも優れています。精密機械や金型、産業用ロボットなど、限られたスペースで高い締結力が求められる場面で広く使用されています。
・アイボルト
アイボルトは、頭部がリング状になっている特殊なボルトです。このリング部分にワイヤーやフックを通して、重量物を吊り上げたり運搬したりするために用いられます。建設現場の資材搬送や工場内での機械移動など、安全に重量物を取り扱う必要がある場面で欠かせません。
360度さまざまな方向から荷重がかかるため、非常に高い強度と耐久性が求められます。安全規格に準じた製品を使用することで、作業者の安全と作業効率を両立できます。
・ビス
ビスは、ナットを併用せずに直接部材へねじ込んで固定する「雄ねじ」です。ボルトと違い、比較的手軽に使用できるのが特徴です。以下では代表的な種類を紹介します。
・小ねじ
小ねじは、比較的小さなサイズで、機械部品や精密機器の組み立てに多用されるビスです。ドライバーで簡単に締め付けられるため、日常生活でもよく目にする存在です。
パソコンや家電製品の筐体、家具など幅広い用途で使われており、種類やサイズも豊富です。寸法はJISやISOで標準化されているため、互換性の高い締結が可能です。
・タッピングねじ
タッピングねじは、下穴を開けた素材にねじ込みながら自らねじ山を形成するタイプのビスです。木材、樹脂、薄い金属板など幅広い素材に適しており、追加の加工を最小限に抑えながら強固な固定を実現できます。
建築や内装工事、電気製品の組み立てなどで多く用いられており、現場作業の効率化に大きく貢献しています。
・ドリルねじ
ドリルねじは、先端がドリル状になっており、下穴を開けずにそのまま打ち込めるビスです。施工時間を短縮できるため、屋根材や外壁材の取り付けなど、大量の締結作業が必要な場面で重宝されます。
耐候性の高い表面処理が施された製品も多く、屋外での使用にも適しています。
ネジの種類を選定する際のポイント
ネジは見た目が似ていても、材質や寸法、用途によって適切な種類が異なります。誤った選定は緩みや破損につながるため、条件に応じて適切に選ぶことが大切です。ここでは、ネジ選定の主なポイントを解説します。
・締結する部材の材質と厚み
まず、締結する相手の部材が金属、樹脂、木材のいずれであるかによって、最適なねじの種類は異なります。例えば、金属同士であれば小ねじ、樹脂であればタッピンねじなどが候補となるでしょう。
また、異なる種類の金属を組み合わせる場合は、一方の腐食が促進される「電食」のリスクを考慮した材質選定が必要です。部材の厚みは、ねじの長さを決める上で最も重要な要素であり、十分なねじ山のかかりしろ(嵌合長)を確保できる長さを選定する必要があります。
・求められる締結強度と使用環境
締結部にどの程度の引張荷重やせん断荷重がかかるかを想定し、それに耐えうる強度を持つねじを選定しましょう。ねじの材質、太さ、そして鋼製ボルトの場合は「強度区分」が、強度を決定する主な要素となります。
また、屋外や水中、薬品に触れるなど、腐食が懸念される環境では、ステンレス鋼や耐食性の高い表面処理が施されたねじを選定する必要があります。高温・低温環境下では、材料の熱膨張による緩みや、材質の強度変化も考慮しなければなりません。
・組立・メンテナンスの作業性
組み立て工程で使用する工具や作業スペースの制約を考慮して、最適な頭部形状を選定します。例えば、狭い場所では六角穴付きボルトが有効な場合があります。
頻繁な分解・再組立が想定される箇所では、工具を使わずに手で締め外しができる蝶ねじなどが作業性向上に貢献する可能性も考えられます。自動組立ラインで使用する場合は、ロボットハンドが掴みやすい形状であるかどうかも、重要な選定ポイントとなるでしょう。
・JIS規格品か特殊品(特注品)か
特別な理由がない限り、JIS規格品を選定することが基本となります。規格品は品質が安定していることに加え、安価で入手性が高く、他社製品との互換性も確保されているという大きなメリットがあります。
製品の軽量化や省スペース化、あるいは特殊な機能が求められ、規格品では要求仕様を満たせない場合に限り、特殊品(特注品)の製作を検討することになります。特注品はコストや納期が増加するため、設計の初期段階で規格品での対応可否を十分に検討することが重要です。
ボルト・ナットに関する当社の事例

当社では、ボルトやナットに関する多様な課題に対応し、供給体制の安定化や品質改善を実現してきました。ここでは、特殊ねじの調達、図面不一致の解決、そして特殊機能ボルトの品質管理に関する事例を解説します。
事例1: 最適なナットの採用と電動化で、コスト・効率を両立
ある機械メーカー様は、丸形状の下穴を用いた従来仕様の締結方法に課題を抱えていました。
六角形状での締結に対応する部品がなく、また競合案件が多いため、コスト面でも優位性を出したいというご相談をいただきました。さらに、既存の締結工具 よりも作業効率を高められる工具の導入を検討されていました。
当社ではメーカーと連携し、仕様に最適なナットを選定。あわせて、コスト競争力を確保できるよう、調達ネットワークを活かして最適なメーカーを選定しました。また、電動ナッターについては同メーカーの製品でデモンストレーションを実施し、実際の組立現場での作業性を検証しました。
その結果、年間5億円規模の案件を受注することができ、コスト競争力の向上と利益確保の両立を実現。加えて、組立作業の効率化にも大きく貢献し、「現場の負担が軽減され、生産スピードが上がった」との高い評価をいただきました。
まとめ
ネジ・ビス・ボルトはいずれも部品を締結するための要素ですが、呼び方や形状、施工方法によって使い分けられています。六角ボルトやキャップスクリューといった強度を重視するものから、小ねじやタッピングねじのように簡便さを重視するものまで、用途ごとに最適な種類があります。
選定の際には、締結対象となる部材の材質や厚み、必要な強度、使用環境といった条件を的確に把握することが欠かせません。加えて、作業性や規格品か特注品かといった要素も考慮することで、安全性と効率性を両立させることが可能です。
当社は製造・商社・物流を一貫して担っており、多種多様なネジの中からお客様の規格や用途に最適な製品をご提案できます。製品選定や加工方法でお困りでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
