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OF A SCREW
ねじの研究室

「ネジ 規格」

ネジの規格とは?主な種類や国内外のネジ規格の違いについて解説

ネジの規格とは何か、基本的な意味から解説します。Mねじやインチねじといった主要な規格の種類、JIS・ISOなど国内外の規格の違い、正しい調べ方まで、製造業やDIYに関わる方が知っておくべきネジの知識を網羅的にまとめました。

ネジは工業製品から日用品に至るまで、あらゆる構造を支える基本部品です。ネジの規格は呼び径(直径)、ピッチ(山の間隔)、山角度といった要素で厳密に定められており、メーカーや国を越えて互換性と信頼性を確保しています。

一方で、メートルねじとインチねじのように外径が近く混同しやすい規格も存在し、正しい知識と測定が大切です。本記事では、ネジ規格の基礎から代表的な種類、主要規格の特徴、そして国内外の違いまでを解説します。

ネジ規格とは?ピッチと角度の意味

ネジ規格とは、ネジの呼び径(外径)、ピッチ(山と山の間隔)、山の角度などを体系的に定めた技術基準のことです。これらの基準が統一されているおかげで、どのメーカーのネジを使っても互換性が保たれ、安全で信頼性のある締結が実現できます。

例えば、最も一般的なメートルねじでは「M(エム)」という記号に直径(mm)を組み合わせた「M5」「M8」といった表記が用いられます。このM5という表記だけで、ピッチが並目なら0.8mm、細目なら0.5mmであることまで規定されています。

・ネジ規格の調べ方

手元にあるネジの規格を調べるには、まずノギスで直径を測定します。おねじ(ボルトなど)の場合は外径を、めねじ(ナットなど)の場合は内径を測ります。次に、ピッチゲージをネジ山に当て、山と山の間の間隔(ピッチ)を確認するのが基本的な流れです。

測定で得られた直径とピッチの値を規格表と照合することで、そのネジがメートルねじなのか、あるいはインチねじ(UNC/UNF)なのか、またJIS規格かISO規格かといった詳細を判別できます。

特に、M8(直径8mm)と5/16インチUNF(直径約7.9mm)のように外径が非常に近い規格も存在するため、ピッチの確認は極めて重要です。また、管用ねじのように先端に向かって細くなるテーパーねじや、山角度が55°の特殊な規格もあるため、不明な場合はメーカーに実物を見せて確認してもらうのが最も確実な方法です。

・おねじ・めねじの測定ポイント

ネジの品質を保証するためには、より精密な測定が求められます。おねじ(外ねじ)・めねじ(内ねじ)の測定では、外径や内径だけでなく、有効径、ピッチ、山の角度などを正確に確認します。特に、ネジ山の幅と谷の幅が均等であるかは、締結強度に影響する重要なポイントです。

精密測定には、マイクロメーターや、有効径を専門に測るためのねじマイクロメーターが使用されます。めねじの場合は、内側の測定に特化した内側マイクロメーターを用います。

さらに、製品の精度検査においては「通りゲージ」と「止まりゲージ」という専用のゲージが活用されます。通りゲージがスムーズに入り、止まりゲージが入らなければ、そのネジは規定の寸法精度を満たしていると判断できます。

・ネジ規格における分類

ネジは用途や機能に応じて、山形の断面形状や規格によって分類されます。三角ねじのような汎用的な締結用から、台形ねじや角ねじのように動力伝達に適したもの、さらに高精度なボールねじまでさまざまです。ここでは代表的な種類を解説します。 

・三角ねじ

断面が三角形をした、最も一般的な締結用のねじです。ねじ山の角度は、メートルねじやユニファイねじ(インチねじ)では60°、管用ねじでは55°と定められています。摩擦が大きく緩みにくいという特性を持ち、ボルトやナットと組み合わせて幅広い分野で利用されています。

汎用的な「並目ねじ」と、それよりピッチが細かい「細目ねじ」があり、細目ねじは肉厚の薄い部品や、より緻密な締結が求められる箇所に適していると考えられます。

・台形ねじ

ねじ山の断面が台形をしており、主に回転運動を直線運動に変換する「送りねじ(リードスクリュー)」として利用されます。三角ねじに比べて摩擦が少なく、軸方向の伝達効率に優れています。

強度が高く、バックラッシュ(運動方向の切り替え時に生じる遊び)も比較的少ないため、工作機械のテーブル移動や測定器など、高精度な位置決めが求められる機構に適しています。

・角ねじ

ねじ山の断面が正方形に近い形状で、軸方向に非常に大きな力を効率よく伝達できる構造です。台形ねじよりもさらに摩擦抵抗が少ないため、ジャッキやねじプレス機など、大きな動力や荷重を伝える用途に用いられます。ただし、その形状から加工が難しく、高い精度が求められる用途で使用されることは少ない傾向にあります。

・ボールねじ

ねじ軸とナットの間に多数の鋼球(ボールベアリング)を介在させ、回転運動を直線運動に変換する高精度な機械要素です。ボールが転がることで運動を伝えるため、滑り摩擦ではなく転がり摩擦となり、摩擦損失が極めて少なく、90%以上という高い効率を実現します。

バックラッシをほぼゼロにすることも可能で、CNC工作機械や産業用ロボットなど、精密で高速な位置制御が不可欠な装置に広く採用されています。

ネジの表記と種類

ネジの表記は、直径やピッチなどを規格化したルールに基づき表されます。表記方法を理解すれば、異なる規格を見分け、適切に選定することが可能です。ここでは代表的な表記方法と種類の違いについて解説します。

・「M」と「インチねじ」の違い

ネジ規格で最も大きな区分が、メートル単位を基準とする「M(メートルねじ)」と、インチ単位を基準とする「インチねじ」です。メートルねじはISO規格に基づき、直径をミリ単位で示します。例えば「M5」と表記されれば、そのネジの直径が5mmであることを意味し、並目か細目かによってピッチも決まります。

一方、インチねじは長さの基準がインチであり、表記方法も異なります。「1/4-20」という場合、直径が1/4インチ(約6.35mm)で、ピッチは1インチあたり20山(TPI)という意味になります。

さらにインチねじには大きく分けて2種類が存在します。ひとつは現在主流のユニファイねじ(UNC/UNF)で、山角度は60°に設定されています。もうひとつは古い規格であるウィットねじ(BSW)で、こちらは山角度が55°です。見た目は似ていても互換性はなく、選定を誤れば締結不良につながるため、規格と表記の理解が重要になります。 

・呼び径とピッチの基礎知識

呼び径とピッチはネジを識別するうえで欠かせない要素です。呼び径とはネジのサイズを表す基本寸法で、一般的にはネジ山部分の外径を指します。メートルねじでは「M8」のように表記され、その数字が直径(mm)を示します。ピッチとは、隣り合うネジ山の頂点から頂点までの距離を指し、ミリ単位で表されます。

例えばM8の並目ねじではピッチは1.25mm、細目では1.0mmや0.75mmなどが規定されています。適切な締結を行うには、おねじ(ボルト)とめねじ(ナット)の呼び径とピッチが一致していなければなりません。

同じ「M8」でも並目と細目では互換性がなく、組み合わせるとねじ込みができなかったり、強引に入れても破損や緩みの原因となります。設計段階から呼び径とピッチを正確に指定し、現場では測定工具を使って確認することが、安定した締結の前提条件となります。 

・インチ表記とミリ換算の考え方

インチ表記のネジを扱う場合は、25.4mmを1インチとする換算が基本となります。例えば3/8インチのネジであれば、25.4mm × 3/8=約9.525mmと計算できます。

しかし、インチねじでは直径だけでなく、ピッチをTPI(Threads Per Inch)で表す点に特徴があります。例えば「1/4-20 UNC」という表記は、直径が1/4インチ(約6.35mm)、1インチあたり20山の並目ねじであることを意味します。

ピッチをミリに換算すると、25.4mm ÷ 20=約1.27mmとなり、ミリ単位での比較も可能です。ただし、外径が近いM8と5/16インチUNFのように、数値だけでは区別が難しいケースもあります。そのため、換算計算だけで判断せず、ノギスやピッチゲージを使って実際に測定することが大切です。

よく使われる主要な規格

ネジには世界中で多様な規格がありますが、実際の製造現場や日常生活で使われるのは限られています。ここでは、代表的な規格について解説します。

・メートルねじ(Mねじ)

メートルねじは、JISおよびISOで標準化された世界で最も広く使われているネジです。呼び径(外径)をミリ単位で示し、「M5」や、ピッチも併記して「M8×1.25」などと表記されます。

ネジ山の角度は60°で統一されており、一般的な「並目ねじ」と、それよりピッチが細かい「細目ねじ」があります。細目ねじは、並目ねじに比べて緩みにくく、精密な調整が求められる箇所で使われます。

その高い互換性と汎用性から、産業機械、自動車、電子機器、建築まで、あらゆる分野で世界標準のネジとして採用されています。

 

・ユニファイねじ(UNC/UNF)

ユニファイねじは、アメリカを発祥とするインチねじの規格です。ネジ山の角度はメートルねじと同じ60°で、日本のJIS規格でも採用されています。ピッチ(TPI)の違いによって、主に2種類に分けられます。

  • UNC(Unified Coarse): 並目ねじ。ピッチが粗く、一般的な締結に広く使われる汎用性の高い規格
  • UNF(Unified Fine): 細目ねじ。ピッチが細かく(山数が多い)、UNCに比べて締め付け力が高く、緩み止め効果にも優れている

航空機や自動車、バイク、そして米軍規格の製品などで広く使用されています。

・管用ねじ(NPT・R/Rc・G)

管用ねじは、その名の通り、水道管やガス管などの配管を接続し、液体や気体の漏れを防ぐために設計された特殊な規格です。主に「テーパねじ」と「平行ねじ」に大別されます。

  • テーパねじ(R・Rc・NPT): ねじ込むほど直径が変化(先細り)し、ネジ自身が密閉性を確保する構造
  • 平行ねじ(G・Rp): 機械的な接合を目的とした、直径が一定のねじ。

いずれも配管の安全性に直結する規格であり、現場での正しい使い分けが重要です。 

・給水栓取付ねじ(PJ)

PJねじは「給水栓取付ねじ」としてJIS B 2061に規定されている特殊な平行ねじです。一般的な管用平行ねじ(Gねじ)と非常によく似ていますが、Gねじよりもわずかに細く設計されています。

管用テーパめねじ(Rp)と組み合わせて使用され、シールテープを巻くことで漏れを防ぎます。サイズはPJ1/2、PJ3/4、PJ1など限られたものだけで構成されています。外径や有効径はGねじと同じですが、許容差がより厳しく設定されているのが特徴です。

・台形ねじ(Trねじ)

台形ねじ(Trねじ)は、ネジの断面が30°の台形になっているのが特徴です。一般的な三角形のネジ(三角ねじ)が「締結」を主な目的とするのに対し、台形ねじは回転運動を直線運動に変える「力や運動の伝達」に優れています。

工作機械の送り機構(リードスクリュー)や、ジャッキ、プレス機など、大きな荷重がかかる機械部品に多く使用されるのが特徴です。旧JISでは「TMねじ」と呼ばれていましたが、現在はISO規格に準拠した「Trねじ」に統一されています。

廃止された規格

ネジの世界では、現在広く使われている規格に統一されるまでに数多くの旧規格が存在しました。中には歴史的な役割を果たしたものや、現在も修理・保守の現場で必要とされるものもあります。ここでは代表的な廃止規格について解説します。

・ウィットねじ(W)

ウィットねじ(Whitworth thread)は、1841年にイギリスのジョセフ・ウィットウォースによって考案された、世界で初めての統一規格ねじです。ネジ山の角度が55°であることが特徴です。

JIS規格としては1968年に正式に廃止されましたが、歴史が長いことから、現在でも建築現場のアンカーボルトや、水道管、給排水設備など一部の分野では慣習的に使用され続けています。古い機械の修理やメンテナンスの際には、このウィットねじが必要になる場合があります。

・噴霧器ねじ(SW)

噴霧器ねじ(SW)は、かつて農業用の噴霧器ノズルなどに使われていた特殊な規格で、「SW13.8」といった呼称で呼ばれていました。

2000年前後に廃止され、現在は管用平行ねじ(Gねじ)に統一されています。ただし、20年以上前に製造された古い農機具の修理や部品交換では、今でもSWねじが必要とされるケースがあるため注意が必要です。

・その他の特殊ねじ

JISやISOに規格が統合される以前には、上記以外にも多くの特殊なねじ規格が存在しました。例えば、旧JIS規格の細目ねじ(JIS B 0207)や並目ねじ(JIS B 0205:1997)は、2001年に現行のJIS規格へと改訂され、廃止扱いとなっています。

その他にも、アメリカで生まれた台形ねじの一種であるアクメねじ(ACME)、のこぎりの刃のような断面を持つバットレスねじ(BUTT)、ミシンに使われるミシン用ねじ(SM)、カメラの三脚に使われるカメラ三脚用ねじ(U)など、特定の用途に特化した旧規格が数多く存在します。

国内外のネジ規格の違いについて

ネジ規格は国や地域ごとに制定されており、互換性や設計思想に違いがあります。グローバル化が進む現在、国内外の規格を理解することは設計・調達・メンテナンスの現場で重要です。ここでは代表的な規格を解説します。

・JIS(日本産業規格)

JISは、日本国内で産業製品の品質や互換性を確保するために定められた国家規格で、ねじに関しても細かく規定されています。ねじそのものの寸法規格はもちろん、関連する用語や図面表記ルールまで整備されている点が特徴です。

多くのJIS規格は国際規格であるISOを参考に策定されていますが、日本の産業構造や設計慣習に合わせて一部修正や最適化が施されています。そのため、国内で使用される製品や機械ではJISを基準にした設計が多く見られます。さらに、JISはISOとの整合性を重視して改訂が繰り返されているため、国際的な互換性も高められています。

・ISO(国際標準化機構)

ISOは、世界各国が共通で利用できる基準を定めるために設立された国際機関です。ねじの分野では、メートルねじを中心とした国際規格が整備されており、グローバルな製品流通において重要な存在となっています。

ISO規格は、寸法やピッチ、許容差だけでなく、材料や強度区分についても詳細に規定しています。例えばISO 261や262ではねじの基本形状とピッチが定められ、ISO 965ではねじの嵌め合い精度が示されています。さらに、ISO 898では機械的性質や強度区分が規定されており、国境を越えて信頼性を担保する役割を果たしています。

・その他の海外規格

海外製の機械や設備を扱う際には、JISやISO以外の規格知識も必要になることがあります。

  • ANSI(米国国家規格協会): アメリカの工業規格を定める機関。ユニファイねじ(UNC/UNF)など、インチを基準としたネジ規格が中心
  • DIN(ドイツ規格協会): ドイツの工業規格。かつてはヨーロッパで絶大な影響力を持っていたが、現在ではその多くがISO規格に移行・統合されている

特に、輸入設備のメンテナンスや、海外へ輸出する製品を設計する際には、これらの規格への深い理解と適切な対応が求められます。

ネジの規格に関連する当社の事例

ある精密機器メーカー様では、通常とは異なるねじ山形状をもつスクリューボルトを使用していました。しかし、従来メーカーの専用機械が故障してしまい、同仕様での加工ができる製造先がなくなったため、生産継続が困難な状況にありました。

当社では、まずお客様から製品サンプルをお預かりし、従来メーカーでの製造情報をヒアリング。その上で、同等のねじ山加工に対応できる協力工場を新たに選定しました。金型設計からプロジェクトを立ち上げ、図面・試作段階での打ち合わせを重ねながら仕様を確定。お客様・協力工場双方での視察も実施し、当社ルートにて正式な取引契約を締結しました。

その結果、従来品と同等の品質・精度を確保したうえで生産を再開。お客様からは「協力工場の実績・試験体制・金型管理など、品質面でも安心して任せられる」と高く評価をいただきました。

まとめ

ネジ規格は製造現場の共通言語であり、互換性や安全性を確保するための基盤です。呼び径やピッチ、山角度といった要素が統一されているからこそ、メーカーや国を超えて部品の調達や組立が可能となり、ものづくり全体の信頼性を支えています。

しかし現場では、規格の混在や図面不一致、測定の不備などによってトラブルが生じることも少なくありません。大切なのは、規格知識と精度の高い測定、そして安定した調達ルートです。

当社は、製造から物流までを一貫して担う専門商社として、規格品の大量調達から一点ものの特注加工まで幅広く対応してきました。製品選定や加工方法にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。